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朔 (櫻 朔夜)
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自己中30%・アルコール15%・思い込み20%・意欲35%,でも人生換算は120%(アホ

※イラストは某絵掲サイトにてQサマの線画に塗り・加筆させて頂いたモノです。
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化学変化の仮定と過程
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 2003年に書いた小説のようです。。。。
 久しぶりに読んで
 ちょっと手直しして掲載。うはぁ……22歳だって 笑

 ていうか、これを作ったときは、小説を書くなんてコレが最初で最後だと
 本気で思っていました。。。。

 今は書く機会と場所を与えてもらって、
 その気になったコトに実に感謝しております(*´▽`)


 えぇ、まだまだですけどね 汗
 本当スミマセン (;´д`)

 僕はソファーに寝そべり、絵筆がキャンバスを滑る音を聞いていた。陽の当たって反射しているフローリング。その光の中、細いシルエットを眺めながら。
『シャッ、シャッ…』時に遅く 時に早く

そうしながら、時たま彼女が僕を振り返って微笑むのを、ただ、ずっと待っていた……


 暑い…
都会の夏はアスファルトの焼ける匂い、聳えるビルの外壁に遮断された空気と人口密度で、暑さを余計に引き立てていた。こんな街中でも、どこに居るのやら鬱陶しさを更に募らせるように蝉の声が重なる。
 そんな中僕はというと、都内の駅のホームに独り佇んでいた。その溢れる音達に、幼少時代への懐古の気持ちと、暑さへの苛立ち両方を感じながら、電車を待つ。滑る様に入ってくる鉄の箱と、それへ乗り込む自分を想像する。さながら、僕は自分の過去を葬る為の棺桶に乗ると言う訳だ…
 自嘲の念を振り切ろうと顔を上げると、少し離れた所に立っていた彼女が、僕を振り返っていた。いつものように微笑んでいる。手には、スケッチブックを持って。
僕は、それに応えて微笑み返す。多少ぎこちなかったかもしれない。それでも精一杯の想いで彼女を見つめる。すると、彼女の唇がゆっくりと動く、聞き取れないような声だが、確かに「向こうに行ったら、絵が描きたいわ」と。


 目当ての特急電車がホームに入ってきた。僕は二枚の指定席の切符を片手に車内の狭い通路を進んでいく。彼女は僕の前を歩いているが、彼女の歩みからは全く通路の歩き辛さを感じない。まるで空気の様だ。彼女の軽やかな足取りは、僕の気持ちを重くしていく。
 彼女の、あの楽しそうな笑顔は遠出の目的を知らないからか。…そういえば、どこかに出かけていく事など、ここ
2年程無かった。座席を見つけ、荷物を棚に押し上げながら、そんな事を考える。2つの席のうち窓際の方を彼女の為に空け、僕は通路側に腰を下ろした。発車のアナウンスと音楽が遠くに聞こえる。少し疲れた。僕は発車と共に、眠気と心地良い振動に身を任せた。




 どのくらい時間が経っただろう。『シャッ、シャッ』という音に気が付いて、僕は眠りから急に引き上げられた。窓の外はもう山だった。遠景から視線を下ろした先に彼女が居た。スケッチブックを開いて窓の外をスケッチしている。電車は相当なスピードで進んでいるから、とりあえず断片的にスケッチだけして、後でまた色を付けるつもりらしい。
 その横顔をじっと眺める。日に焼けて少し赤らんでいるだけの、白い手が美しい。ぼんやりと頭の片隅で考える。いつからだったろう、この光景はいつもの光景だ。彼女の部屋がフラッシュバックして、霞のように眼前に広がる。ソファに寝そべる僕。横顔をこちらに向けてスケッチブックと対話する彼女。
 視線に気が付いて振り返る彼女。その気配に、僕はハッと現実に引き戻された。微笑む。彼女も微笑み返す。通路を挟んだ反対側の席の老婆が、僕を見て怪訝な顔をしているのが視界の端に見えた。


目的地はもう、すぐそこだった。


 改札口を抜け駅から出ると、彼女の父親が迎えに来ていた。
「ご無沙汰しておりました」

そう口にしながら、手を上げて近付く。相手もこちらに気付き、荷物を持とうと手を差し出しながら言った。
「ああ、元気そうで何よりだよ」
と、荷物を受け取り、車のトランクを開ける。彼女はというと、父親を見て微笑んでいる。相変わらずね、と言いたげに。
 「まあ、どうぞ」と父親が助手席のドアを開けてくれた。僕は彼女がシートへと座るのを待ってからドアを閉め、自分は後部座席へと腰を落ち着けた。父親がルームミラー越しに僕を見る目が、どういう意味なのか分かるようで、胸を締め付けられる思いだ。一言二言、近況などを話した以外、彼が再び話すことは、もう無かった。


 彼女の家は特急の停まる駅からは、車で一時間程山に入ったところにある。田舎の旧家で、昨今あまり口にする事の無くなった、箱入り娘と呼ぶに相応しい女だった。そんな彼女が、恋人として紹介する為に初めて僕をここに連れてきたのが4年前。家の中はあれから、何一つ変わってはいなかった。田舎特有のゆっくりとした時間の流れ。彼女の部屋…どれ1つとして、家具の配置さえ、変わっていない。彼女は部屋に入ると、僕を振り返って先ほど電車で描いていた絵を僕に見せながら、またゆっくりと聞き取れない声で言う。「今日はこのまま、これを描いているから、父の相手をしてあげて」と。


 「今夜は飲もうや」
と、父親が嬉しそうに日本酒の一升瓶を掲げて見せた。
「いいですね、晩酌のお相手になりますよ」
「最近は女房も俺の酒には嫌気が差しているみたいでな、独りで飲んでばかりだよ」
「独りのお酒は体には、あまり良くありませんよ?」
「それを言われると痛いがな」

父親の、少し寂しそうな笑い声。僕の、作り笑顔。途中から、それに嫌気が差したと言う母親が結局同席となり、笑い声が交じり合った。
 それぞれの想いが交錯して、夜はそうして更けていったのだと思う。酒が目から出てくるのではないか、それとも本当に涙なのか、と思う程飲んでいた。明日の為に。


 暑い…
都会ほどではないが、また違った意味で、暑い。今朝は快晴だ。彼女の父親に車を借り受け、今回の遠出の本当の目的地に向かう。山道だった。彼女は助手席で一心不乱に外を見ていたが、僕が呼んでも振り返りはしなかった。何か、思い出そうとしているのかもしれない。消え入りそうな後姿だった。
 到着して車を降りると彼女は車の中。「おいで」と手招きする。通りかかった近所の住人が僕の行動に訝しげな視線を向けるが、構いはしない。彼女は車を降りたが、その足取りは重い。しかし構うものか。彼女は……
狭い道を進む。沿道には石だらけの、単調な風景が広がっている、どこまでも続いているかのように。しかし、それには必ず終わりが来る、そう、例えば今日までの僕のように。

 数分後、僕は目的のものを見つけ、その「石」の前に立った。
そして、ゆっくりと…呼びかける。2年間、その「石」に向かって言う事はおろか、相対すらできなかった禁忌の名。




「…美絵子…」




 彼女が亡くなったのは2年前。唐突な、しかしありふれた交通事故だった。僕は2年を経た三回忌の今年、やっと彼女の墓前に立った。
 信じられなかった。あの時。蝉の声しか聞こえなくなった夏の日。僕はあの時から妄想として彼女を繋ぎ止めるしか、できなかった。悪かったとしか言えない。随分と月日が経ってしまったけれど
 僕は君の現実を僕の現実として受け止める、今日はそれを言いに来た。だから…

 
 閉じていた眼を開くと、彼女が僕の前に佇んでいた。その顔はこちらを振り返り、泣きそうになりながらも、微笑んでいた。そして、唇が動く。

「そうね、私も絵を描きにいくわ。だから貴方も、もう行っていいのよ」

いつもの事だ。だが今日…この時は



一人よがりかもしれない、しかし彼女の声は今、はっきりと僕の耳に届いた。


 僕は帰りの電車を待っていた。彼女の両親は揃って僕を駅まで送り、何度も美絵子の部屋はこれからもずっとそのままにしておくからまた来てくれ、と言っていたが、お互いにもう会わないだろうという事は何とは無しに分かっていたような気がする。
 乗車間際、僕は彼女が居る山を振り返った。青い空と山々に、僕は自然と微笑むのを抑えられなかった。色々な想いが駆け巡った。幾千もの蝉の鳴き声が、キャンバスを撫でる絵筆の音の様に降り注ぐ。彼女の別れの言葉かもしれない。


 その景色と音とを、充分に胸に刻む。

 一人分の指定席の切符は、握り締めてぐちゃぐちゃになっていた。窓際の席を確保し、肘掛の小さなスペースでその切符を綺麗に広げた。次にこの電車という棺桶から降りた時、彼女が僕を振り返り微笑むのを、再び待つ事は無いのだろう、永遠に。それは思い出でしかない。そして解き放たれた彼女は、新しい命へと還る。


 瞼の裏に、あの乗車間際に振り返った風景と彼女とが、一枚の絵の様に焼きついていた。もう1度、僕はその絵に向かって、呟いた。

『さようなら』





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