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朔 (櫻 朔夜)
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※イラストは某絵掲サイトにてQサマの線画に塗り・加筆させて頂いたモノです。
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化学変化の仮定と過程
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【小説お題】

起の文 : 積んでは壊し積んでは壊し、未来永劫、遊び続けるがいい

結の文 : 子供のころから、何度もそういう夢を見たことがある。


 
真っ白な、ただただどこまでも真っ白な部屋があった。いつから其処に居たのか、皆目検討が付かない。気が付いたら、そこはただの白、だった。どこからが壁で、どこまでが天井なのかも分からない。その白は永遠に続いているようにも見えた。
私は、と考える。
 
私は誰だったのだろう?
 
何も覚えていなかった。ここに居るからには、どこかから入ってきたのには違いない。けれどもその入り口と思えるようなものは此処には無い。通常あるべき壁すら無いのだから、扉らしき隙間など、見回したところで確認できるはずもなかった。太陽があるわけでもなし、光源の無い空間ではあったが、強い光に包まれたように、影さえ落ちる隙もない。広がる白い空間以外目に入るものは何も無く、時折どこかから、身体を撫で回すような、生温い風が吹くだけだった。その風がどこから吹いてくるのかも、私には全く分からなかった。
ただ1つ、覚えているとすればそれは、地の底から響き耳にこびり付く様な、
『積んでは壊し積んでは壊し、未来永劫、遊び続けるがいい。』
という言葉だった。誰から言われたのか、何故それを言われたのかも分からない。ただひたすら、何かを積み続ける…それだけが今の私が記憶している、唯一の時間の過ごし方なのだという認識があった。
 
「さて…」
私は手を擦り合わせながら、周囲を見回した。そうするのが何度目のことだったか忘れたが、何もなかったはずの白い空間を肩越しに振り返ると、そこには子供が立っていた。5、6歳だろうか。何の前触れも無かったその突然の出来事に、私は思わず素っ頓狂な声をあげた。
「お前、どこから入ってきたんだ!?」
するとその子供は、上目遣いに私を見てこう答えた。
「アソコだよ」
そう言いながら、空間の一角を指差す。その方向を見やると、いつの間にかではあったが、なるほど確かに、亀裂のように黒い筋が確認できた。その筋は多分この場所の壁に当たる部分に伝っているのだろうが、この場所はあまりに白すぎて、黒い亀裂はそこに浮かんでいるようにも見えた。
「僕、アソコから入ってきたんだよ!!」
 
その子供は、常識で考えれば落ち着きなど微塵も持たぬ年頃に見えるというのに、ただ上目遣いのままに気味悪い笑みを浮かべて、そこに立ち続けていた。何故か、その視線に捉えられた私の背中を、冷や汗が伝う。まるで周囲の空気が固まってしまったかのように、身体が一瞬で緊張によって硬直した。子供の頭の上の方、遠くに見えるその黒いヒビは、音が無いはずのこの空間に、みしみしと音無き音を響かせて、徐々に広がっている。
 
「やめろ!!!」
 
 私はそう叫んでいた。理由は分からないが、とにかく私は、まさに頭を鈍器で殴られたような衝撃に動揺していた。この気色の悪い生暖かな風も、その黒い隙間から吹き込んでいるようだ。気付けば遥か遠いその亀裂に向かい、私は走り出していた。どこまで走れば外界との境に辿り付けるのか、目測すらままならない白い部屋。突然現れた子供は、いかにもな気味の悪い笑い声をあげながら走る私の後をついてくる。ケタケタと笑いながら、「遊んで!!」と甲高い声をあげて。
私は別に掴まれているわけでもないのに、その子供を振り払うように滅茶苦茶に腕を振り回し、言葉にならぬ声で喚いていた。そうしている間にも、亀裂からは外界の景色が滲み出すように覗き始めていた。当たり前ながら、子供よりは早い私の速度で、背後の笑い声は段々と遠ざかっていった。それなのに、あの黒い筋には近づけない。
 
そしてそれは突然やってきた。足が、何か障害物を感じたのだ。何も無かったはずなのに、と考える間もなく、私の身体は床にあたる白い空間の底に突っ伏していた。不思議と痛みは感じなかったが、起き上がり足元を確認すると、注意深く目を凝らさなければ気がつかない程白に同化し過ぎた、ブロック片の様なものが無数に散らばっていた。
1つ、拾い上げてみる。しげしげと眺めていると、視界の横から、ぬっと手が伸びてきた。ビクリとして顔を上げると、先ほどの子供よりも幾らか年上に見える、15歳くらいの少年が立っていた。彼は私の持つブロックをおもむろに取り上げると、私がしていたようにそれを眺めながら無表情に言った。
「あ、これに気が付いちゃった?」
 
 そして私は、見た。その少年の頭の上の奥の方、黒いひび割れが、更に広がっているのを。私の頭は、足元に散らばるブロックがあのひび割れによって落ちてきたものだと理解するのに、1秒もかからなかった。そのブロックが、亀裂の広がりと比例するように足を覆い始めたからだ。
「さすがにここまで広がったら、いくらアンタでも気が付くよねえ」
無表情だった少年が薄ら笑いを浮かべた。そう、まるで最初に現れた子供のように。
「まさか!?」
私は愕然とする。この白い空間の存在自体が既に在り得ないというのに、そのまさかの可能性…亀裂の広がりによって成長する子供の存在を否定しようと、頭がフル稼動していた。
「そんな馬鹿な話、あってたまるか!」
 
 私は夢中で足元のブロックを掴んでいた。勿論、あの亀裂を修復するために。少しでも亀裂に近付かなければならない。そう決心して顔を上げると、私はまたしてもとんでもない光景を眼にした。どんなに走っても近付くことすら出来なかった亀裂が、目の前にある。亀裂と呼ぶには広がりすぎたその「穴」の方から、私に近付いて来たとでもいうのだろうか。そしてその傷は、あろうことか少年と私の間にあった。こんなこと、現実には在り得ない。しかし少年の首から上は、実際に「穴」で遮られて見えなかった。
 
 
 否応無しに穴の中へと意識が集中する。ぼんやりと見えていたそれは…
巨大な眼だった。人間の、片目だった。それがキロキロと動きながら私を覗き込んでいた。巨大な眼は、茶色の光彩を持ち、瞳孔は開き切っていた。あまりの大きさに、その瞳の裏に走る血の色までが見えそうだ。
 私は言葉を失っていた。少年の首から始まっているような穴の中の目玉と、視線は合い続けている。徐々に恐怖が這い上がってきた。目玉が瞬きをする。その動きで生暖かい空気が流れ込んでくる。その間にも、穴の際からブロックがボロボロと零れていた。
その巨大な人間は、今にも目玉だけでなく顔半分を露にしそうだった。唇の端が覗いている。その口角がキュと、上がった。…笑っている。笑っている。そしてその唇が開いた。
「出ておいでよ」
それはまた 少し成長したであろう少年の声だった。
 
 
「わあああぁぁ!!!」
私は半狂乱に陥った。手に掴んでいたブロックを穴の端から積み上げていく。どこまでもどこまでも、無限と思える作業だった。泣きながらブロックを拾っては積み、拾っては積み…
その向こう側から少年の声がする。
「積んでは壊し積んでは壊し、未来永劫、遊び続けるがいい…」
少年の無邪気過ぎる邪悪な声が白い空間を満たす。私が覚えていた唯一の言葉、それはこれだった。こうしているのは一体何度目だったのだろう?
思い出してはいけない、と私の頭の裏側で警鐘が鳴る。それが何故なのか考える暇も無かった。「遊びじゃない!」私はただただ、泣きじゃくりながらブロックを積み続けた。
 
 
 
 
どれくらいの時間が経っただろう。少年は消えていた。子供も居ない。傷1つ無い真っ白な空間で、私は疲れて、眠りに落ちた。
 
 
 
 
 
 
目が覚めると、私は真っ白な空間に居た。どこまでも白く、どこからかの光なのかは知らないが、強いそれによって影すら落ちぬ、私だけの空間に。
 
音も無く、風も無い。私は、多分この空間の中心と思われる場所で寝転がり、身体を丸めていた。孤独でいることの安堵を噛み締めながら、つい先ほどまでのコトはすでに忘れていることにすら気が付かず。
 
 
 
と、動くはずのない空気が、振動している気がして私は身体を起こした。神経を研ぎ澄ませる。これは…音?注意深く耳を済ませる。宇宙にも似たこの世界に、音などあるはずがない。いや、あってはならない。再び私の背中を冷や汗が伝う。
 
『………で……から……しょ…』
『そん……どうし……』
 
話し声だった。どこからだろう。だんだんとハッキリしてくるような…
 
『もう……は目を覚ましても……』
『どうして………を覚まさないん……う?』
 
ジワジワと胃の辺りに恐怖が広がり、せり上がってくるのを感じた。
 
『目を覚まさないのは、この子が現実に戻りたくないからでしょう』
 
今度はしっかりと聴こえた。私が…何だって?
男性の声に続いて女性の声。
『そんな…一体どうして…』
これは……このヒトは…
 
 
「お母さん?」 
 
 
口にした途端グラリ、と耳を劈くような声とともに私の創った真っ白な空間が揺らぐ。
『ねえ、起きて!!聞こえてるんでしょう?もっと大事にするから、だから…遊びじゃないのよ!?早く起きなさい!さぁ、帰るわよ…!!』
『お母さん、揺すらないで……!!』
男性の、制止する声。
 母親の放つ振動で、私は白い中を転がされて床に酷く頭を打ちつけた。その衝撃で失っていた記憶が、脳裏に怒涛のようにフラッシュバックして押し寄せてきた。幼い頃からの、忘れた記憶、忘れたかった記憶。それが火花のように私を埋め尽くす。
 
 
 
 
 
 いやだ、いやだ、見たくない、痛い、痛いイタイ!!!!!
 
 
 
 
「私の心に、入ってくるな!!!」
 
私は大声で叫んだ。届くはずのない、心の声で。子供の頃から何度も、そういう夢を見たことがある。目を覚ませば、痛みしかない。叫んでも叫んでも、誰にも届かない。つい今しがた、転んでも痛くなかったはずの身体が、切り刻まれるような痛みに襲われる。
 
「嫌だ嫌だ!!!!」
 私は身体を丸めて、耳と目を塞いだ。
 
 
 
 ふと、ヌラリ…と身体を撫で回すような身に憶えのある生温い風が吹いた。
身体が硬くなる…一体何度目だろうか、ゆっくりと目を開いて、私は肩越しに背後を振り返る。1つ、真っ白なブロックが落ちていた。その先に…
 
 
「遊ぼうよ!」
 
 
 口の片方だけを上げた、不気味な笑いの小さな子供が居た。
 
 
 
醒めさせない、この夢だけは。
私は意を決して立ち上がり、落ちていたブロックを拾った。
 

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