内側を覗けば、頭の中心からその奈落に吸い込まれ、代りに内側にしまいこまれていた嘘っぱちの表皮がクルリと入れ替わって、外界への接地面が変わる。すると僕は嘘っぱちに包まれた蛹になって、深く遠く閉じ籠る。
誰も気付かない、誰も届かない。その中で、ずっと自分だけを見て、ずっと自分だけと話して、外側には、ほんの1割にも満たないくらいの力しか遣わずに、全力で自分と激突する。
気付いたら他人の中にある闇など取るに足りない存在になっていた。一番信じられないのが自分だったから。僕の目に映り込む一番の闇が自分の内側だったから。
閉じ込められ、押付けられ慣れた、それだけのこと。
飛び出した、今は自由な僕は、今どこに向かっているのだろう。何がしたいのだろう。作られた確固たる意思は本当に僕なのだろうか。それはどこに続くのだろうか。
僕はどこに行くのだろうか。表情に表情という嘘を与えたポーカーフェースの僕は、このまま巧く糞みたいな社会を生きていって、何も見つけられないまま死ぬのかもしれない。そう思う。
思い込みで作り上げた脆過ぎる自我には、何も宿らない。
模索のために枝葉を伸ばし過ぎた細いばかりの宿り木には、羽根の休まる足場さえ無い。
自分で閉ざした此所までの道は、すでに廃れて獣道以下の悪路でしかなく、進むべき途は靄のかかった未知の領域だ。今立つこの自分の容積を支える台地でさえ今にも崩れるかもしれない。それでもただ気怠い今を僕が生きてる。
それだけが紛れも無き事実で、脆いからこそ内側から血痕のように滴る僕の僕自身が、痛みと共に生きていることを実感させる。出し尽くし、全てを明るみに、白昼のもとに晒せば、空になった僕は渇いて他を取り込む余裕を持てるのかもしれない。
嗚呼、きっとそうに違いない。
それで僕はまた違う途を見つけ辿るのだろう。終わり無き螺旋の階段を、何度も立ち止まり繰り返し、天を仰ぎながら、そうするに違いない。
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